2時間ほど歩いた桃頃とI部長。
さすがに13歳年上のI部長は、足の疲労が溜まってきて膝まで来ているとのこと。
しかもスーツで革靴。
桃頃は私服通勤なのでジーパンにスニーカーです。
途中、通過する某市の市役所で防災無線が流れていました。
”〇〇地区と△△地区と・・・・の停電は復旧の目途が立っておりません”
桃頃の家もまだ復旧してないのだろうか・・・・・
I部長宅は電気は来ているそうですが・・・・・
煌々と明かりが灯っている牛丼の松屋を横目に、
大きな幹線道路を渡りました。
ちょっとした上り坂でも”今の足にキマスね~”なんて言いながら歩いていると、
なんか違和感を感じます。
I部長も同じみたいで、
「桃頃、なんか暗くないか?」
「確かに・・・・・暗いッスね」
渋滞中の車のライトがなかったら、辺りは真っ暗。
”こんなところから停電してるのか・・・・・”
めちゃくちゃ広範囲に停電が起こっているようです。
歩道もない真っ暗な道を歩くのは危険かつ気味悪いので、
仕事で電気基盤などのチェックをするときの為のミニマグライトを片手に
不気味で静まり返った住宅街を歩き続けました。
途中、某嫁から電話が入り
「やっと繋がった・・・・・・」と某嫁。
「今どこにいるの?車で迎えに行くよ」
ありがたいのですが、携帯も繋がらず、土地勘もあまりない某嫁と
路上で会えるとは思えない上にこの渋滞ではいつ到着するかも読めない状況なので、
「M君ちにいたんじゃないのか?もう家にいるの?」
「M君ちの犬が地震でパニックになっちゃって、あまり長居もできないから
戻ってきたけど・・・・寒し電気もつかないし、怖いし・・・・・
だから迎えに行きたいんだけど・・・・・」
「この状況じゃ迎えに来るって言ったって会えないよ。あと1時間くらいで着くだろうから
怖いだろうけど家で待ってて」
「真っ暗だし、怖いし・・・・・」
「家の中は大丈夫だった?水槽とか2階のテレビとか」
「2階はわからないけど、水槽は大丈夫だったけど・・・・・・」
「とりあえず家で待機しててくれ」
某嫁もだいぶ参っているようすでした。
I部長が
「嫁さんと連絡取れて良かったな」
「はい、でも停電してて・・・・云々・・・・・・
そっか!!近くのファミレスとかに避難しててもらえばいいっか!!!」
我ながら名案だと思い、悴む手でメールを打ち始めました。が、
「店もみんな閉めてましたよね・・・・・・」
結局メールを取り消して歩くしかないと歩きだしました。
途中で通電している地域も少しあり、運よくコンビニがやってました。
コーヒーを買ってタバコを吸いながら、
”こりゃとんでもないことになったな・・・・”と二人で話していたとき、
某嫁からメールが来ました。
『100m先は電気が来てるみたい。あそこの飲み屋に避難しています。
近所のM園さんもいるから大丈夫です』
これで某嫁対策も片付き歩くことに集中できます。
二人の家の最寄り駅まであと一駅のところで、警察車両が何かをやってます。
手信号してるみたいですが、そこから駅に向かう道も封鎖されていました。
I部長が「あれ・・・・・・駅か???」
真っ暗な中に駅の上に建てられているマンションが不気味に見えました。
暗すぎてハッキリとは見えないのですが、正直”怖い”と思うしかなく、
商店街も住宅も何もかもが停止ボタンを押されたかのように
全く人気と生活感が感じられなくなってました。
「こんな風になっちゃうんですね・・・・・・」
「こりゃ、映画やドラマの世界だな・・・・実感わかないわ」
そんな死んだような街を歩き、最寄駅付近までたどり着くことができ、
ここでI部長とお別れです。
「お疲れさまでした。ここからはこっちをまっすぐ行けばいいですから」
「了解、ありがとう。桃頃も気をつけてな」
あと10分くらいで某嫁の待つ飲み屋に着けます。
つづく